がれきの映像を何日も続けて見ると、最初は呆然とした気持ちでいたのが、今はつくりたい気持ちに満ちている。
大江健三郎はある講演で芸術を次のように定義している。
「音楽にしても文学にしても、一般的にそういえるだろうと思うのですが、芸術をつくるとはどういうことか?最初に混沌というか、混乱したナマのものがあります。私たちの人生、現実の世界はまず混沌としてある。それに秩序をあたえる、かたちをあたえること、が芸術をつくることだと私は考えるのです。」
私たちの人生、現実の世界はまず混沌としてあるならば、がれきはそれがナマのものとして現前に表れた姿である。
私たちは、つくることを生業とする者として、このがれきにかたちをあたえていこう。それはもう始まっているはずだ。呆然としてはいられない。