gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 ラウンド・ミッドナイト

サックスの巨人、デクスター・ゴードン主演。そのしゃがれ声を聴いているだけで映画の中へ引き入れられる。

クラブで毎日サックスを演奏するデイル。周りに酒を禁じられているが、つい酒を飲んでは、病院に運ばれることの繰り返し。

「毎日創造するということは、それが美しいものであったとしても、とてつもなくつらいことなんだ。」このセリフを毎日部屋にこもってガウン姿で料理ばかりしている隣の住人に言わせるところがすばらしい。

老いてよろよろ歩く大男のデイルが、毎日、音の世界を広げるために格闘している姿が、静かな凄みを感じさせる。創造を目的とする人生とは、かくも困難なものか。

デクスター・ゴードン自身、この映画が公開された1986年の4年後に、この世を去っている。彼のセリフは、ゆったりとしていて、やわらかく、そして、全てを見通すがごとくスキがない。

パリで彼を支え続けてくれたフランシスへの最後の言葉。
「レディ・フランシス。この世に・・・親切は少ない。」