gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

美容室ecruの制作を終えて

「工場の廃墟をつくってください」というご依頼のリノベーションでした。「真っ白な壁では汚さないように動かねばならないので、スタイリストがのびのびと動けないのです」と。

「廃墟」をつくるとは、どういうことか?時間が為した仕事を人間がどのように為すことができるか?ずっと考えているうちにたどり着いたのは、アーティストのアトリエでした。描いては、塗りつぶす。壁にその行為を繰り返すうちに、以前描いたものは、どんどん壁の奥に遠ざかっていく。そして、以前描いたものが消えてしまう寸前に、かすかな傷みをを伴って時間が刻まれるのではないか?

それはここ数日で為された作業であったとしても、最初に描いた線は、驚いたことにもうずいぶん遠い昔に描かれたように感じられる。

この行為によって、廃墟の時間性と同質の何かを達成できたか?それは訪れる人に判断してもらうしかありません。スタイリストの方々はのびのびと動ける空間になったか、という視点と共に、何かを感じていただければうれしいです。