廃墟の中に入ると、心が動く。
自分の中の野生が目覚める、という人もいるだろう。
自分をコントロールできなくなるといえば危険だし、抑えつけるモノがなくなるといえば自由だし・・・。
他人との関係性がどうなるかはお互いに未知数だから、一人でこっそり入った方がいい場所かもしれない。
その空間がつくられたときを想像する。使用されていた頃を想像する。
すべてが時間という自然の作用に覆いつくされて、今では過去の人々の情熱はぼんやりと痕跡として見い出されるのみだ。
そして、それらもまたいつか消え去ろうとしている。
夕陽が傾いて、窓からの光も絶えようとしている。
歴史もまた、闇に融けていく。
ぼくの心の中に、生への渇望が湧きおこる。
闇に吞まれる前に、ここを出よう。