「ペンキのキセキ」の被写体は海外が多いです。なぜか?日本の家はメンテナンスの不要な、工場で大量生産されたサイディングの仕上げばかりだからです。海辺の倉庫街だって白かベージュなどの地味な色ばかりで、カラフルな色が使われることがほぼありません。それに対して、海外には、カラフルな色遣いのペンキを好む国々が多いから、被写体はそんな国で発見されることが多いのです。
また、町をカラフルにすることで、町全体が活気づくこともあります。上右の写真はメキシコのバチューカという町のペンキを塗るプロジェクトで、建物の壁にカラフルな色をアーティストたちが塗ることによって、町に観光客が増えるとともに、犯罪率が大幅に減少したそうです。(写真はMENTAL FLOSSより)
ならば、日本に塗装で溢れるカラフルな町をつくることはできないだろうか、と考えました。そんなイメージを描いてみると、海辺の町である鋸南町が最適だと思えてきました。海風がペンキの塗られた表面を変化させてくれるからです。人が塗装した壁や塀に、時間という自然が作用して、唯一無二の風景をつくり出してくれるに違いない、と。
もちろん、日本には日本にふさわしいカラフルな風景があるはずです。時間という自然が作用したものに美を発見する「侘び寂び」の感覚を研ぎ澄ますことによって、ぼくらが魅力を感じ続けることの可能な風景を実現できるかもしれません。
そうすれば、町を歩くのが、愉しくなるのではないでしょうか。行きたくなるし、そこで過ごしたくなる。街の活性化の一役を担うことができるかもしれません。
そして、ぼくらGRIDFRAMEはまた、塗装した表面が風化した素材をSOTOCHIKU素材として新たな空間づくりに生かしていけます。