gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

内側

それが内側からの笑顔なのか、みんな知っている。

 

100歳の車いすのおばあさんが、ピンクの着物を着てカメラの前で笑っている。

 

ここ30年の世界が推し進めてきたのは、内側からの感情の排除だ。

 

世界はすでにモノに溢れ、それを手にして笑っていても本当に心からうれしいと思っているか、量ることができない。他人はもちろんのこと、自分自身の気持ちがわからない。

 

おいしいものを食べに行っても、本当においしいのかどうか、わからない。あるのは、高級な料理とそうでない料理という区別だけだ。

 

誰もが虚栄心を満たすことに懸命だったときがあって、その頃から本当の内側はわからなくなってしまった。

 

ぼくが子供のころに住んでいた九州の片田舎には、10キロ圏内に中華料理屋が1軒しかなくて、年に数回の特別な日には家族でその回るテーブルで食事をした。そこで食べるスーパイコをぼくは本当に愉しみにしていた。

 

だが、現在、東京で生まれ育った陽向は、どんなレストランに連れて行っても、本当にそれを喜んでいるか、わからない。

 

きっと世界のどこにいても同じことは起こっているのだろう。

 

ぼくらはサービス側の意図を好む好まぬにかかわらず見抜いてしまう能力を身に着けてしまって、どんな場所にいても半ば白けた気分で過ごしてはいないか?

 

今後、関わりたい仕事は、人の内側から出てくる気持ちを信じられるような仕事だ。

 

冒頭の車椅子のおばあさんの笑顔を疑う人はいないだろう。例えば、そんな仕事に関わらせていただきたい。