「人生とは、なにかを計画している時に起こってしまう"別の出来事"のことをいう。」
ある映画でこんな言葉があった。古代の時間とは、まさにこの「別の出来事」のときに流れるものだろう。だから、その時間の中には、嬉しいことも悲しいことも含めての「人生」がある。
現代社会は計画している時に起こってしまう「別の出来事」を嫌う。ネガティブなことが起こらないうちにその原因を取り除こうとする努力は、それを徹底すればするほど、同時にポジティブなことも失ってしまう結果をもたらしてしまう。
例えば住宅についていえば、ハウスメーカーは 全てのパーツを自社カタログから選ぶシステムを完成している。そのため、「別の出来事」が入り込む余地がほとんどない。そのことによって、品質が保証され、工程や見積がずれる要因もほとんどないから、依頼主は安心して竣工を待つことができる。一方で、そのメーカーのつくる住宅は全て同じ仕様でつくられるため、依頼主のためのオリジナリティへの驚きや感動はほとんど期待できない。
同じことがあらゆる分野で当てはまる。ぼくはこのことに強い危機感を抱いている。もし、現代社会における計画すべてがそのまま実現するようになれば、人間は時間を失うと同時に、それぞれの「人生」を失うことになりはしないか。
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