この世界は、貧しい生活をしている者が必要なものを手に入れながら生きる場合と、裕福な者が必要だろうと親などが考えるものをすべて与えられて生きる場合の2種類があって、後者に対する憧れが一般的なものとしてある。
だから、親はできれば子供に自分が必要だろうと考えるものをすべて与えようとする中で、子供たちは生きている。
では、子供にとっては、どちらが幸福だろうか?
貧しさの中に育った子供は、もちろんその貧しさのゆえに、道を踏み外してしまう、という例もあるだろう。
しかし、この時代にあっては、半世紀前と比べて食費は下がっているから、飢える子供は少ない。食が満たされてさえいれば、子供が欲しいと心から願うものを持って、それを求めていく生き方ができたとすれば、それはこの上ない幸福ではないだろうか?
自分が求めもしないものを、親から押し付けられ、大切な子供としての時間を塗りつぶされていくことが、子供にとって幸福でありうるだろうか?
大切なことは、自分が夢中になって追い求めるものがあるかどうか、だ。
与えられることの過剰は、押し付けられることの過剰になる可能性がある。
こんな一般論をシンプルに一人の子供に当てはめることができはしないが、貧しさをベースに置いた方が、人間の心にはむしろやさしいのかもしれない。
悩ましいところに立っている。