gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

住宅をデザインする

グリッドフレームはこれまでの22年間、ほとんど住宅をつくってこなかった。

 

それは、店舗が直接的にクライアントのための空間ではなく、カスタマーのための空間であるため、クライアントと同じ方向を向いて空間づくりを進められるのに対し、住宅はクライアントのための空間であるために、クライアントと向き合って空間づくりをしなければならない、と決めつけてそのイメージに勝手に窮屈さを感じてしまっていたからだ。

 

しかし、KZ邸の空間づくりは決してそのようなプロセスではなかった。店舗と同様、クライアントに向き合うのではなく、同じ方向を向いて空間を考えることができた。

 

クライアントと「のっぴきならない」何かを共有することができたからである。

 

それは、ぼくの言葉で言えば、住宅に「外部」を取り込むことだ。

 

クライアントの言葉で言えば、「洞窟(ほらあな)に籠ること」。そして、「海外で暮らしていた子供の頃、緑青を吹いた銅板屋根の古い教会へ連れていかれると子供ながらに空間に圧倒され、押し黙った」その空間性を住宅の中に実現することだ。

 

この社会の見えない暴力性に晒されながら、ぼくらは生きている。

 

 暴力とは、自分がやりたくないことを強要されること、だ。私が私であることを認めてもらえないこと、だ。

 

そんな暴力から身を守る場を持たなければならない。

 

クライアントにとって、「洞窟」や「古い教会」はそのような場の象徴なのだ。