1998年。佐藤真監督。飯塚聡助監督。
3つの知的障碍者施設の輝くエネルギーを捉えたドキュメンタリー。
ぼくは、ちょうどこの頃に、3つの施設の中の一つ、平塚・工房絵に出入りし、アートの展示会のお手伝いや作業デスクの制作をさせていただいていた。
この映画の主人公の一人、しげちゃんとも何度も会った。助監督の飯塚さんとも会った。
20年以上が過ぎ、しげちゃんが亡くなったと聞いて、もう一度この作品を見たいと思った。
しげちゃんは、ぱっと見、障碍者には見えない。読み書きも、話もできる。感情が昂りやすいところがあるが、すぐに反省する。やさしい。
若いお姉さんが好きで、それを公言し、自己紹介をすることを生き甲斐にしている。そして、「しげちゃん」と呼んでほしい。それがゴールだ。
ぼくらの大半はその行為に共感できるところがある。子供だったら、かわいい、と思う行為だ。
だが、しげちゃんはもう大人だ。突然、呼び止められて自己紹介される女性の中に、「怖い」と感じる人がいても不思議ではない。
障碍者と健常者。その境界が引かれているとしたら、ちょうど境界の上にいるのがしげちゃんだ。
内部。外部。その境界。その境界に近ければ近いほど、生きづらい世の中だ。
だが、境界に近づくことによって、生きる濃度も増す。
そのころ、しげちゃんを眩しく見ていた。
まひるのほしは目に見えない。