女子高生とやくざの恋。
安藤サクラの主演デビュー作は、主演女優が撮影4日前にキャンセルしたことにより、代役として成立した。
映画の中でも、代役としてコーラスのソロを歌うが、元々、彼女の顔は代役に向いている。
それは、能面のように、色のない顔をしているからだ。だから、どんな色の人間にもなれる。
他の俳優たちを見ても、全員その顔に色がある。彼らが倒れれば、代役が必要となるだろうが、代役として彼らはふさわしくない。
彼女がすごいのは、主役の代役に向いている、ということだ。憑依型と呼ばれている。役が彼女に決まってしまえば、誰が出る予定だったかなど話題にもならない。もうとりかえは利かなくなるのだ。
もうひとつ、憑依型でありながら、カットがかかるともう役抜けできている、ということ。こちらの方がより稀有な能力かもしれない。ここで役を引きずる人は、鬱になる俳優に多いように思うが、彼女には全くその要素がなさそうに感じる。
安藤サクラのような仕事を目指す人が増えると、きっと世の中はとりかえのきかないものにあふれ始め、自分の生きる意味を実感する人が増えてくるのではないか。
ひとつの道しるべになりうる存在かもしれない。