gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

理想の生活

コロナ禍によって産業資本主義がいかにもろいか、を思い知らされて、それぞれの人の理想の生活像自体が変化してきているだろう。

 

ただ、多くの情報が飛び交っていて混乱しているために、今後を見通すことができず、なかなか言語化できる状況ではない人が多いのではないか。

 

ぼくなりにはっきりしてきたことを書くと、全面的に何かに頼っていればいい、という生活は終わった、ということだ。今までも、自立してやってきた、という思いを持っている人もいるだろうが、今まで自明だと思っていたことがそうではなくなっていくとすれば、自立を支えていた見えなかったものが揺らぐかもしれないのだ。

 

例えば、アメリカでは、清掃員が感染して、街中にゴミがあふれた、ということが起こったらしい。当たり前の生活を維持していくことすら、揺らぐ可能性に晒されている。どんなことだって、起こりうる。

 

ある意味、人間はサバイバルな事態に直面しているだろう。そして、普通ならそのような事態になると、人間は美的価値を追うことを放棄せざるをえない。

 

けれど、産業資本主義がつくってきた生活がある意味であまりにも生命感覚の薄っぺらいものであったがために、危機に直面することが生きている感覚を強めている今、むしろ、人間は美的感覚も研ぎ澄まされているのではないか、とすら思える。

 

ハウスメーカーはもう半世紀に亘って便利・快適な家をつくり続けきたけれど、コロナ禍になってぼくたちがつくらせていただいているプロジェクトは、ハウスメーカー的な家の中のリノベーションだ。大量生産建材の便利・快適な部分をあえて排除し、金属や石を素材として原初的な自然の中にいるかのような空間へ変える試みだ。

 

それは、半世紀前はまだそうであった、壊れているものを前提とした生活を積極的に選択することではないか?今後起こりうるどのような状況にも対処していける構えをつくるためには、つまり、誰かの掌の上に載せられた生活を降りることだ。