(「満洲暴走 隠された構造」安富歩)
「家」を守るために、戦争にいく。徴兵されて死んでも、そのことで子孫は優遇されていく。
室町時代から江戸時代までは、それまでの「氏」に変わって、「家」の時代だという。
だが、明治から昭和にかけて、家が崩壊していく。その本質は、徴兵制で多くの兵を集めるために、「軍役の負担が家単位から個人単位になった」からだという。
では、なんのために戦争へいくのか?家ではなく、別のイデオロギー装置が必要になって、お国のために死ぬ、というイデオロギーがつくられた。
安富歩は、この「家」の代わりに、個人主義ではなく「立場」というものが析出されてきたのではないか、と考えている。
「自分は本当はこう思うけれど、この立場ではどうにもならない」というセリフが臆面もなく飛び交う社会で、苛酷な「とりかえのきく世界」はつくられている。