gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

目の前の不幸

映画「ディア・ドクター」の中で、目の前の他人に起こる不幸に対して、思わず手を差し伸べてしまう人間の本能について問う箇所がある。

 

例えば、手が届く位置で急に目の前の人が倒れそうになったとき、考えるという手続きを経ることなく、倒れないように手が出て、相手を支える。きっと、それは相手が誰であろうと同じだ。この本能は、人間に限らないのかもしれない。

 

しかし、時間がゆっくりと動いたらどうだろう。スローモーションで倒れていく相手には、手を差し伸べる前に、考えてしまう。もし、相手が自分に何の関係もない人であれば、なおさら。

 

考えているうちに、その人はすぐ近くでぱったりと倒れてしまうだろう。良心の呵責にさいなまれるのは、そんなときだ。

 

距離が離れていれば、もう自分はなにも感じないに等しい。その事実を知っていたとしても、どこか外の世界で起こっていることにすぎない。

 

自分にはもっと身近でやらなければならないことがたくさんあるのだから。

 

思わず手を差し伸べてしまう距離や時間差には、個人差がある。ぼくは、それらが長い人に強い魅力を感じる。考える、という手続きを経ない人に。

 

ぼくは、すぐに考えてしまって、咄嗟に動くことができない人間だからだ。

 

だが、考えることで相手を救えることはあるはずだ。時間はかかっても、そのような不幸が生じないように、根の部分を変えていけるかもしれない。

 

一生をかけて、そんな思いを成就させたい。