gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 今度は愛妻家(2回目)

2010年。行定勲監督。

 

家族3人で観たくて、6年ぶり2回目の鑑賞。

 

妻(薬師丸ひろ子)は1年前に事故で死んでしまって、夫(豊川悦司)は一人暮らし。いや、妻の幽霊とふたりで暮らしている。

 

2度目の鑑賞なので、観ている3人の中でぼくだけはそれを知っている。ディテールは忘れてしまっていたが、この活き活きとしたかわいらしい妻は、幽霊だということを。

 

だから、初見であれば、後半の夫のセリフ「なあ・・・。お前、どうして死んじゃったんだよ。」で、初めて妻が現実にはもういないことに気づくのに、今回は最初からずっと、切ない。

 

今回、改めて気づいたのは、幽霊には2種類がいること。残された者から見える幽霊と見えない幽霊。

 

見える幽霊は、見ている者がつくり出している。好きな時に呼ぶことはできないが、はっきりと姿が見えている。写真には映らないけれど、会話だってできる。

 

けれど、見ている者は、それを自分がつくり出しているのを知っている。だから、夫は優しくて寂しい目で幽霊に語りかける。

 

「なにか俺の想像もつかないこと言ってくれよ」

 

幽霊は、微笑んでそれには答えない。

 


夫は次の一歩をようやく踏み出そうとしている。そして、クリスマスケーキのろうそくに火を点ける。妻が、そうするのが好きだったから。

 

そのときに、最後の幽霊が微笑んだ表情で目の前に現れる。けれど、今度は見えない幽霊だ。夫は、確かに妻が来ていることを感じ取るが、きょろきょろと探しても目に見えない。

 

ろうそくを少しずつ吹き消す。幽霊も少しずつ消える。そして、暗闇。

 

妻の霊がこの時、この場所へやってきたのだ。夫がつくりだしたのではない。本当にここにいる。

 

見えない幽霊なら、心を鎮めれば、その言葉をきくことができるかもしれない。自分の想像もつかない言葉を。