gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

未来へ開く 4

SOTOCHIKU(外築)

 

一般的に、新しく空間をつくるときは、新品の建材を用いてできた後もできるだけ新しいままを保とうとする。つまり、無意識のうちに、未来へ向かって閉じている。

 

一方、SOTOCHIKUでは、外で雨風に晒された壁など、屋外の自然環境のなかで歴史が刻み込まれた豊かな表情を持つ素材を空間に積極的に取り入れていく。

 

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「空間ができあがったときにその歴史が始まるのではなく、すでに時を経た素材を持ち込むことで、重層的な時間が流れる空間になります。朽ち滅びていく、という時間性が取り込まれることによって、過去から未来へ向かって生きていることが明確に意識されるようになると思うんです。」

 

「それは、かつての3世代、4世代で一緒に暮らしていた頃の温度を取り戻していくような試みなのかもしれません。その頃の方が、未来を考えるスパンが長かったのではないでしょうか。」

 

SOTOCHIKUには、すでにあるものを持ってくるほかに、自分たちで素材をつくることもあるそうだ。田中さんが見せてくれたのは、とあるホステルのラウンジの写真。

 

「海の近くにあるホステルで、『海を感じる』というコンセプトで空間をつくりました。壁に絵のようにかかっているものは、黒皮鉄という表面の黒い鉄板です。これを砂浜に持ち込んで、波が来たところに一瞬だけ浸ける。するとその瞬間の波の形が錆として現れるんです」

 

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「それは、ある時間の自然のカタチの記録です。その瞬間にカタチは失われ、二度と再現することはできません。こういうものもやはり空間に時間性を与えることになって、そこにいる人の時間の流れに対する意識を促します。その空間が内包する豊かさを感じてもらえたらいいなと思います。」

 

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(つづく)