ぼくが子供の頃夢中になった柔道は、引き分けの多いスポーツだ。
個人競技でこれほど引き分けの多いスポーツが他にあっただろうか?
無論、個人戦では判定で勝ち負けを決するけれど、団体戦では有効なポイントがない限り、引き分けとなる。
ぼくは、相手にきれいに投げられるということがほとんどなかったから、大体引き分けて、時折勝つという選手だった。例えば、中2の時の全国大会で団体で優勝したときも、2勝3引き分けという成績だ。
だから、ぼくは「勝つ選手」というよりは、「負けない選手」だった。
なんとなく、これまでの人生を象徴しているかもしれない。
だが、当時も決して負けないことを目標にやっていたわけではない。
今も、きれいな一本をとるにはどうするか、と考える。その情熱は変わらない。