はるか遠い中米パナマのコーヒー農園では
虹を見ることが多いという
遠くの空に浮かぶ雨粒のスクリーンに
太陽というプロジェクターで光を当てると
その円の中心という特等席に私を置いて
大きな虹という映画が始まる
隣で観ている人は
その人を中心として
また少しだけ違う映画を観ている
地上に見える虹は、その円輪の半分で
あと半分はいつも地中にある
空にかかる虹に未来を思い描くように
地中の見えない虹に
今につながる遠い過去を思い描こう
コーヒーの木の根は地中の虹をじっと見つめながら
過去の蓄積としての肥沃な養分を静かに地上へ送り続けて
コーヒー豆の一粒一粒へと届ける
その一粒一粒が丁寧に収穫され、乾燥され、選り分けられ、袋に入れられ、
運ばれ、焙煎され、挽かれ、
ようやく一杯のコーヒーが抽出される
そのプロセスに最先端の技術が入り込むことで
一杯のコーヒーの中でも最上のものにたどりつく
その一杯を口にするとき、
再び、あの虹を見るように願って
その人にしか見えない、それぞれの虹を・・・