陽向が柔道に通う講道館から電話があって、陽向が友達の水筒やTシャツを更衣室のロッカーに隠すという事件を3回も連続して犯した、と知らされる。
この犯人が陽向だということが、防犯カメラを調べてみて判明した、とのこと。
講道館の先生方が、3度とも何百もあるロッカーを全部開けて見つけてくださったそうだ。
持ち主にも、先生方にも、悪いことをしてしまった。
じばらく自宅謹慎になった陽向に問いただすと、ぼくがやりました、と。
一体、どうしてそんなことをしたのか、と聞いてみると、何度聞いてもよくわからない。
いたずらをしようと思ったわけではない、と言っているのはわかるが、陽向のボキャブラリーでは、動機をうまく説明できない。
ずいぶん時間をかけて、「大切なものだと思ったから・・・」という言葉が出てくる。
つまり、大切なものだと思って、ロッカーにしまったのだ、ということだった。
後先のことを考えられないことと、ボキャブラリーが少ないことが、引き起こした騒動だったと理解した。
謝罪文を書かせ、先生方に説明をしに講道館へ出向いた。
先生方は皆真剣に陽向のことを考えてくださっている。感謝に堪えない。
二度と同様の事件が起こらないよう、陽向に言って聞かせる。
今までも問題があったら、1回や2回では、なかなか改善されなかった。
学校の担任の先生の言い方をすれば、陽向のコップは大きいから、水が溢れるまでは何度も注ぐ必要がある。
一つ一つ、大事にやっていくだけだ。