ぼくが柔道を始めたのは小2の今の季節だった。
佐賀県鳥栖市の警察署3階に道場はあった。一度目は親に連れて行ってもらったが、二度目からは1人でバスで通う。
3階へ上るのはコンクリートの外階段で、上り口にチョークでらくがきがあったのを憶えている。
「どうしよう 3かい」
誰が書いたのか知らないが、らくがきはそのまま、ぼくの気持ちを表していた。
格闘技。強くなれるだろうか。
不安を抱えながら、3階への階段を上る。
ぼくは、きっと引き締まった表情をしていただろう。
先ごろ、空手を始めた陽向の練習している顔を外から見ながら、そう振り返る。