gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

ガラス板に押さえつけられる大根

森敦の『意味の変容』の中に、畑に植えられた一本の大根の葉の上に男が四角いガラス板を載せ、その四方に鉛のおもりを置いて、低速度カメラで撮影する、という場面が出てくる。

大根は、この不当な圧迫に憤り、ガラス板をはねのけるべく闘い、ついにはガラス板は地面へ滑り落ち、砕け散る。大根は歓喜しているかのごとく、その葉をひるがえす。

「一旦、大根を密蔽して全体概念をなさしめた内部から、内部外部を以て全体概念をなすところのものに変換することに成功したと思ったからであろう。」

「しかし、」と森敦は書く。「境界をなしていたガラス板はもはやない。境界なくしては内部外部はなく、全体概念をなすことはあり得ない。」


本当に自分を生かして存在している瞬間を、森敦は「全体概念をなす」と呼んでいるのだろうと思う。

ならば、トンネルに閉じ込められたように感じられたこの一年こそ、全体概念をなしていたのだ、と言えるのではないか。

むしろ、トンネルを抜けたときに歓喜して全体概念を失わないようにいつも気を緩めずにいたい。



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