gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 東京公園

2011年。青山真治監督。

暴力の匂いのしない青山真治の映画もあるのだ、と思った。いつもの張りつめた空気はそこにはない。

陽向が生まれて以来、東京の公園に訪れる回数が極端に増えた。この映画の井川遥のように、ベビーカーを押しながらのんびりと歩く東京公園。時間はゆったりと流れる。

公園の中と外では別世界、といってもいいくらいだ。その空気を知っていると、この映画はより味わい深いものになるだろう。

主人公が公園の中でカメラを向け続ける対象の井川遥にはセリフがない。ひとことも発さない美しい人は神々しいほどに感じられる。それを陰から見つめれば尚更だ。

しかも、女性が母としてそこにあるとき、その笑顔はすぐそこにありながらどこまで行っても到達できない美しさを讃える。

人が人をどのように見つめるか。主人公が3人の女性に対して向ける視線は、それぞれはっきりと違う。

最初のシーンで主人公が井川遥の写真を撮ることを男から咎められるように、他人をまっずぐに見つめることは社会から禁止されている。

ぼくも見たいものを見ないことは多い。人生の中で、何かをまっすぐに見つめることは実は稀少な体験であり、今日も気がつけばぼんやりと前を見ながら街を歩いている。


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