二十歳の頃、初めて海外へ連れて行ってくれた飛行機はパキスタン航空のケニア・ナイロビ行きで、途中トランジットで、パキスタンのカラチに一泊するものだった。
だから、初めて海外で一日を過ごしたのは、カラチである。
飛行機会社がとったホテルに連れていかれてすぐに、ボーイにコカコーラを勧められる。ぼくは両替をしていなかったから、米ドルしか手元になくて、2ドル(当時1ドル=250円)払った。
後で他の日本人に話したら、「ずいぶん高い買い物だ」とバカにされた。
両替していないことを見通して、カモにされたらしい。
白塗りのアーチ壁の薄暗い空間に現れる赤い制服のボーイの、したたかでインチキくさい雰囲気は、最初の海外経験として記憶に焼き付いている。
が、ぼくはその雰囲気が嫌いではない。みんな、生きようとして必死なのだ。ぼくもそれなりにしたたかにならないといけない、と決意する。
次の日、炎天下の街に出て、ガンダムのように装飾されたバスに乗る。
同じ飛行機だったお姉さんがタンクトップ姿で街を歩くと、その後ろに男たちの行列ができる。
そんなわかりやすいエネルギーを感じながら、何ものからか解放されていく自分がいる。