子供が生まれる前から、なんとなく怖れていたことがあった。それは保育園の運動会である。
それは約20年前の私の姉夫婦の話にさかのぼる。
姪が保育園児のころ、義兄は運動会に参加した。まだ、30歳前後の頃だ。義兄と姪がダンボールのキャタピラの中に入って、四つんばいで前進する競争があったそうだ。義兄は必死に前進し、姪はダンボールの中でぐるぐる宙を舞っていたらしい。
・・・そんなに本気なのか・・・!
40半ばで父親になった私としては、20〜30代の若い父親との真剣勝負は、勘弁してくれ、という思いだった。
というわけで、運動会のときは、どんな理由をつけて競争に不参加で済ませるか、の作戦を練る必要がある、と半ば真剣に考えていた。
だが、現実の運動会は様子が違った。なんと陽向の通う保育園の親御さんは私と同じくらいの年齢ばかりなのである!
父親が参加する運動会のプログラムは、老人になってもできるくらいの、考案する側のいたわりの気持ちが伝わるようなものだった。そこには、競争すらなかった。
そうなると、ずるい私は俄然強気になる。
「もっと真剣勝負をしよう!」「この日のために、毎週ジョギングを絶やさなかったんだぜ!」などという気持ちが頭をもたげる。
・・・阿呆である。