gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

樹海

富士の山裾に広がる樹海には、かつて一度訪れたときの強烈な印象が残っていた。

それまで自分の中にある森のイメージとは明らかに違う何かがあった。

それが何だったか、確かめたい思いで、青木ヶ原へ訪れた。

樹海とはよく言ったもので、海の底を思わせる世界が広がる。私たちは、ここに「いる」というより、「沈む」という表現がまさにふさわしい。

九十九里の海で、満月の夜の遠浅の海岸を吸い込まれるように沖へ向かって歩いたことがあったが、ここでも死に対する怖れを忘れさせる何かを感じる。

自殺の名所と言われる所以だが、裏を返せば、自殺者は死のうと思ってここへ来た人だけではないだろう。

満月の夜の海と同じく、「死に近い場所」なのだろう。

死は、常に生と共にあり、足元では黒い蟻たちが白い羽虫の亡骸をせっせと運んでいる。

死を感じさせることが、私の中の生を目覚めさせる。

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