1974年。ケン・ラッセル監督。
マーラーの夢の世界を描き、それと彼の楽曲との関係性を探った作品。もとより、マーラーの音楽に馴染みのない私には、監督の意図を十分に理解したとはいいがたい。だが、それなりに入り込んで、楽しめる映画だった。
映画の中に、マーラーが自分の子供が幼いときに、幼い子供の死をテーマとした曲を書いたことに、妻アルマが激怒するシーンがある。
その怒りに対して、マーラーの返す言葉は次の通りだ。
「僕が音楽を選ぶんじゃない。音楽が僕を選ぶんだ。」
その後、本当に子供が亡くなってしまう。
このシーンを観て、思い出したのは、小椋佳の「ほんの二つで死んでゆく」という曲である。小椋佳も自分の子が2歳のときにこの曲を書いて、妻が怒ったという話を聞いたことがある。
いずれにせよ、つくる行為が自身の生活を超えた次元にあるという認識なくしてこのようなことは不可能である。空恐ろしいほどのアーティストの覚悟を感じてしまう。
以下、「ほんの二つで死んでゆく」の歌詞である。小椋佳の「優しさ」の表現には、覚悟が秘められている。
池よりも湖よりも海よりも
深い涙を知るために
あなたにサヨナラ言うのです
人の世のおとぎ話をかき集め
ほんの二つで死んで行く
あなたのまわりをかざりたい
月よりも太陽よりも星よりも
遠くはるかな旅をして
あなたをさがして呼ぶでしょう
雨がふる 僕はしずくをかき集め
ほんの二つで死んで行く
あなたの小舟を浮かべたい
はかない運命に死ぬ時も
ゆりかごにゆれているように