gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

動物園2

以前からcage(檻)/stage(舞台)というコンセプトで様々な空間をつくってきた。ADMJの社長室とショールームの関係は、その代表的なものである。
http://www.gridframe.co.jp/x02admj.htm

cageとは強制的に見られる場であり、stageとは意図的に見られる場である。通常、これらは別々の場所としてあると思われている。しかし、例えば、街へ出ることは意図的に他人に見られる場へ自分の身を置くことだ、と言う人にとっては街はstageであろうし、他人に見られたくないが用事で街へ行かざるを得ない、と言う人には街はcageであろう。つまり、同じ場所がcageにもstageにもなりうるのである。

このように書くとcageはネガティブな空間のように思われるが、人は進んでcageに身を置こうとすることがある。つまり、強制を求めるときがある。

例えば、暗闇でデスクライトひとつを点けて、何かを創造しようとしているとき、暗闇から無数の視線を感じることがないだろうか。

その視線が、私に創造的であることを強制するのだ。そこに、一瞬の閃光が走る。

創造とは、cageからstageへと貫く一筋の閃光である。

さて、動物園の檻に戻る。

動物たちは徹底的に観客を無視する。そこにコミュニケーションは皆無である。もちろん、それでよい。コミュニケーションがあったとしたら、動物たちはストレスで病気になってしまうだろう。飼育係も動物たちが淡々と過ごせるように心がけているのだろう。

そのとき、檻は、単なる二つの世界の仕切り線となり、どちらがどちらに属するという関係性を解消するだろう。そう、それはcageでもstageでもない、ということだ。

ただ、ひとりだけ、気になった動物がいる。(あえて、「ひとり」と呼びたい。)長い間、座って動かないゴリラのモモコだけが、こちらへ寂しそうな目を向けた。動物園で、彼女だけがcageの中にいたのかもしれない。

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