gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

災害ユートピア

柄谷行人のサイトの書評を読んでいたら、震災のすぐ前に「災害ユートピア」という本について書いていた。

『人々は自然状態では互いに敵対するというホッブズの政治哲学が、今も支配的である。だが、それは国家的秩序を正当化するための理論にすぎない。災害後の「ユートピア」が示すのは、その逆である。国家による秩序がある間他人を恐れて暮らしていた人たちは、秩序がなくなったとたん、たちまち別の自生的な“秩序”を見いだす。それは、他人とつながりたい、他人を助けたいという欲望がエゴイズムの欲望より深いという事実を開示する。』

これはどの国にも成立することらしい。村上龍があるインタビューに答えて、日本では「リーダー層の能力の低さを前線・現場の一般人がカバーする、それは近代化から戦争、高度成長に至る、伝統的な特徴でもある」と言ったそうだが、程度の差はあれ、このことはおそらく世界共通である。

だが、私が1994年にロサンジェルス地震を現地で経験したとき、被害に乗じてたくさんの銀行が襲われたことを知っている。おそらく被害がさほど大きくなかったからであろう。町ががれきとなるくらいの徹底的な打撃を目の当たりにしたときに初めて、大多数の人にとって他人を助けたいという気持ちが他のすべての気持ちより勝るのだろう。

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