お笑い芸人にも、漫才はおもしろいが、バラエティはつまらない、というタイプがいる。
お笑いブームは長く続いているようだが、今、もてはやされている芸人は、バラエティを得意とするタイプの方だろう。つまり、反射神経のよい人たちだ。
ネットでも、2ちゃんねる、ニコニコ動画、Twitterなど、何も考えずに思いついた言葉を即座に書き込むメディアが流行っている。熟考しなければ人に読ませる気にならないモダニズムの世代にはとてもついていけないところがある。
冒頭のお笑い芸人も、モダニズム的人間なのだろう。
話は変わるが、私は小学校から高校まで柔道をやっていたが、そこそこ強かった。だが、私自身は反射神経がどちらかと言えば鈍い方だったと思う。なぜ、強かったのかと言うと、技のタイミングがやや遅いがために、相手が防禦のタイミングを合わせられないから、だと思っている。
つまり、反射神経の鈍さを生かしたのだ。
さて、私もモダニズムを批判して、つまり、いわゆる「丹精込めてつくる空間」では本当によい空間はつくれない、という思いで、グリッドフレームを興した。
しかし、だからと言って、その場で反射神経によってのみつくっていけばよいとも思っていない。重要なことは急ぎ過ぎないことだ。反射神経と熟考の間でやると、いわば、対象が身構えるタイミングとこちらのタイミングがずれるのである。
だから、時折、とんちんかんなことも言ってしまう。社内では、それによって他のスタッフを困らせることがあるが、それは、ずれたタイミングのなせる業で、こちらでは自覚的である。うまくいけば、見事に相手は転がる。
このように書くと、すこぶる個人的な作戦のように聞こえてしまうだろう。だが、反射神経と熟考の間でつくられたものこそ、人を惹きつけるものになりうる、という感覚に対して私は自信を持っている。