ノウハウ本や自己啓発の本を読む人が増えているのを感じる。そのような人たちは、たいてい小説を読まない。読んだことが、自分の人生に直接的に役立つ気がしないからであろう。
村上龍のRVRで、彼が芥川賞受賞作品について語っていたが、「洗練されてはいるが、自己完結している。趣味的作品だ。それを「いいな」と思って読むのはよっぽどの読書好きか、年寄りだけだ。」というようなことを言っていた。
そして、「若者がこれからどう生きるべきか、を示す役割を担うような小説が好きだ。自分が若い頃は、中上健次、大江健三郎や谷崎潤一郎を読んで、これからどう生きるか、をそこに見つけ出そうとしていた。」
私も決して小説をたくさん読む方ではないが、本を読むときは「これからどう生きるべきか」という切実な問いとともに読んでいる。
ノウハウ本や自己啓発の本は読まない。なぜなら、直接的過ぎて、自分の世界に変換する必要がないからである。他人の世界を自分の世界に変換するという創造的行為がなければ、何かが自分自身のものになるはずがない、と私は思う。
小説を読んで得られるものは、読む者に任されている。これらを読んでいると、時折、かけがえのなさに触れたような気がする瞬間がある。映画を観るときもそうだ。
だが、読むべき小説にたどり着くことは難しい。