gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 沈まぬ太陽

会社とは何なのか?働くということはどういうことなのか?

終身雇用が崩れたといわれる今日、一つの会社で定年を迎えるまで勤め上げる人はどのくらいいるのだろう?

昭和の時代を描いた映画である。現代の若者は、こんな仕打ちを受けるのなら、辞めちゃえば、と思うかもしれない。辞めなかったのは、「私や子供たちがいたから?」と主人公の妻が問う。

先月に死んだ父のことを思う。父は大企業で最後まで勤め上げた。家族であれば、会社生活の中でつらい時期があったことを知っている。なぜ父はあのとき会社を辞めなかったのか?

定年後、父は、「本当は自分の好きな仕事をしたかった」と言った。そして、辞めなかった理由は、「家族を養うため」と言った。だが、それだけではないだろう。

私は、昭和の時代には、辞めるという選択肢がなかったのだと思う。一旦会社に入れば、定年まで勤め上げる。きっと、それ以外になかったのである。

だが、それ自体がネガティブなこととは思っていない。父の世代は、それを自然体で受け止めて、ときには必死に、降ってきた責任を背負って立ったのだ。私たちには信じられないくらいの誠実さを持って・・・。

そんな「自然体」が成し遂げることは半端ではない。それが日本を一気に先進国へと押し上げたのだ。

好きな仕事に就くのではなく、就いた仕事を好きになる、というのが、父の時代の論理だったろう。父も仕事が好きだったはずだ。

私も父のようでありたいと思っていた。大学を卒業後、入った会社で定年を迎えるつもりだった。会社更生法申請(事実上の倒産)という外部要因がなかったら、辞めなかっただろう。

映画の中では、ある者は会社で出世するために犯罪者になったり、ある者は会社の権力闘争に巻き込まれて嫌がらせを受けたりする。会社内部に渦巻くネガティブな感情の嵐が様々な正しさを呑み込んでいく。

本分をしっかりとやろう。それ以外に会社の健康を保つ方法はない。そんなあたりまえのことをできていない会社があるとして、自分の力でそれを変えようとするか、それとも、あきらめるか。それとも・・・

主人公が最後に選んだのは、左遷としてのナイロビ勤務を快く受け入れることである。こうなれば、だれも主人公を打ち砕くことはできない。