gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 ジュリア

幼馴染のジュリアとリリアン。貴族に生まれ、明晰な頭脳と美しい容姿を持ちながら、労働者階級の味方となり、反体制の闘士として戦うジュリア。そんなジュリアを慕いながら、物欲や名誉欲を持った自分の凡庸さに劣等感を抱くリリアン

戯曲家として成功したリリアンは、ベルリンの地下組織で活動しているジュリアに依頼されて、命がけで大金をベルリンに運ぶ。二人はベルリンで久しぶりに再会するが、ジュリアは片足を失っていた。ジュリアは一人娘がいることをリリアンに明かし、養子として育てることを依頼する。娘の名前はリリーと付けた、という。

ジュリアは、リリアンを「臆病を極端に嫌うがあまり、ときに能力以上のことに挑むところがある」と分析していた。逆に言えば、リリアンは自分が臆病であることを知っていて、そのことにコンプレックスを抱きつつ、常に石橋を叩いて渡るように、着実に人生を送ることのできる人間だった。ジュリアは、臆病という感情を知らず、思い立ったらすぐに行動を起こす人間であり、それゆえに自分はいつも死と隣り合わせであることを自覚していた。娘を得ることで、ジュリアもまたリリアンのような人生に憧れを抱いたのだろう。

ジュリアは、最後は体制派に暗殺される。そして、死後、実家から無視され、一人娘も消えてしまう。彼女に臆病という感情があれば、こうはならなかっただろう。だが、歴史はこのような人を犠牲として必要とする。血の継承はなされなくとも、彼女の魂は誰かの心に焼き付いて決して消えぬものとなり、次の時代へと継承されていく。

そして、ジュリアについて語る役目を担うのが、リリアンである。