いちばん近い場所にある歩道橋にこんな美しさが。
2月29日は、オリンピックイヤーを想起させてきた。ああ、今年もお祭りだな、と。 東京オリンピック2020は、それは政治家と大企業の利権の温床であることを露わにしたことで、オリンピックはもう夢の祭典ではなくなった。 パリでもきっと似たようなことは行わ…
陽向は14歳になった。 いろいろな問題が現れては消える。消えるときには他の問題が現れている。どんどん更新されていきながら、彼は大人になっていく。 そんなふうにして、昨年の今頃の彼とは全然違う彼がいる。 ぼくは想定外であり続ける彼の存在に一方で振…
ecruは1階2階が同一平面を持つ美容室だ。 それぞれの階を明確に分けるため、2階床スラブ面について対称にセット面を配置した。 1階は重心が低い重量感のある空間。2階は重心が高い浮遊感のある空間。 どちらも工場の廃墟を想起させる空間だ。
陽向が突然動きを止めるようになった。 例えば、食べるのを急に止めて、動かなくなる。 歩くのを急に止めて、動かなくなる。 こちらが促す言葉は聞いているのだが、動こうとはしない。 これが長いときは1時間ほど続く。 彼の中で何が起こっているのか、わか…
「明日からのテストを受けるのをやめます」 陽向のこの宣言は、残念でもあり、一方で安心するところもある。 ちょっと不安定なことを自分でよく分かっているのだ。 よし、それでいい。 後で家でテストをちゃんと受けるように。 自分で自分のペースをちゃんと…
陽向は今も湧きおこる衝動性と闘っているけれど、表情はずいぶん柔らかくなってきた。 来週は学年末テストで、緊張しているかもしれないが、表情に硬さがないのはうれしい。 このところ毎日いろんな事件を起こしてきた陽向だが、一緒にいてどこか安心してい…
2023年。岩井俊二監督。アイナ・ジ・エンド。 陽向が「見に行きたい」と言って、ecruの引き渡し後、90分もかけて車で深谷シネマへ。 ぼくは東京よりこういう映画館の方が好きだ。 映画はアイナジエンドのうたで満ちていた。 311の「揺れる」という…
北浦和の美容室ecruの制作もほぼ終わり、後は明日の掃除を待つのみだ。 今回は、壁と床に専念。 白い漆喰壁には毎日とにかく手を入れては上から薄い白で覆い隠すことを繰り返した。 そして、上里町からの土壁を砕いて、スサ入りの土を壁に塗り付けて、縦に引…
漫画を描くことと、それをドラマ化することは、全く性質が違う。 だから、それぞれの作品に同じものを求めること自体、ナンセンスだ。 それぞれが独立した作品だ、と考えるべきだ。 漫画家はその作品性を手放すことなく、ドラマ化を許してはならない。 テレ…
床の塗装が空間に及ぼす力を思い知る。
土壁の土。スサと相俟って、やさしい空気をつくってくれる。
陽向と九十九里を走った。 真亀川総合公園の入口。バブルの頃につくられたのか、突然シンメトリーな造形に遭遇する。陽向も「びっくりした」 竹林の前の葦の原。なんてやわらかいんだ。 太陽光パネルの傾きが効いている風景。 真亀川の土手を走る。 夕陽。鳥…
成田悠輔と長渕剛の対談で、世間に理解されなくても自分の本音を隠さない者同士で、長渕が「一緒に闘ってくれる人を求めている」というシーンがあった。 この二人に共感するところは少ないが、ぼくも「一緒に闘ってくれる人」を強く求めていることを気づかさ…
「まとめようとしない」 そう決めて、壁をつくる。 ぼくは、人をもう一つの世界へ連れていくためにつくっているのだから。 なにか嫌悪すべきものがそこにあってもいい。
このプロジェクトでは、久しぶりに基本的なトラス構造をつくった。 構造力学の基礎を築いて、20世紀初頭に教科書をつくったティモシェンコ。 ぼくもその教科書で構造力学を学んだ。 つくり手のアトリエ空間として、つくっては塗りつぶしていく壁。 ティモシ…
美容室ecruのトラス構造が設置された。 空間の何かが動き始めたのを感じる。
例えば、雨が自分に降りかかってくるように・・・ 垂直ラインで描かれた作品は、自分の心へ向かう だから、刺さる作品も多いのだろう 水平ラインは自分の方を向いていない だから、自分とは距離を感じる 自分を安全な場所に置いて作品を見ることになる しか…
陽向の行動は、周囲に誤解されやすい。 悪意はなくても、悪意と解釈されることも多い。 鍼灸師の小笠原さんが教えてくれたのは、ぼくらにできることは陽向の代弁者であることに尽きる。 なぜ陽向はそうするのか? これをだれよりも理解し、誤解が生まれる前…
これでは壁になりえない。透けて見える意図が不快だ。 これなら壁になりうるが、何もしないのとさほど変わらない。 近づいてきたかもしれない。あとは貫いている縦ライン、横ライン、重量の配置だろう。
子供の頃は、目に見えない境界がなくて、どこへだって入っていけた。 ぼくが小学生の時、毎日のように知らない家の塀の上などを通って、毎日違うルートで柔道場へ通っていたことを思い出す。一度も叱られた覚えはない。 中学生になり、体の大きさが大人と同…
2011年まで本社を置いていたビルが、とうとうなくなった。 取り残された空間には、いつも残像が漂う。 しばし立ち止まり、ゆらゆらとそれを追う。
線を描いては塗りつぶす。これをひたすら繰り返していくとき、いつ、そのレイヤーの積み重ねがぼくの線から離れて、ぼくが消えていくか? ぼくが残りすぎていれば何も起こらないし、消えてしまっては行為の意味がなくなる。消えてしまうその直前を捉えて、そ…
エイジングとは、古く見せること。つまり、古いふりをすること。それでは、空間は本物ではなくなる。 ぼくらが欲しいのは古い空間と同一の空気感であって、新しいのに古いと見せかける空間ではない。 では、どうすればいいか? 嘉門達夫的に言えば、「ひねり…
元旦に起きた能登半島地震について、「ぼくたちにできることは何だろう」と考えています。 2016年に起きた熊本地震で母が一人で住む実家が半壊になったこともあり、被害の状況を想像すると胸が痛みます。 被害に遭われた方々へ心からお見舞い申し上げます。 …
陽向と、一枚の写真を頼りに青山墓地へ大久保利通の墓を探しに行った。 まず背景に写っていたビルを探して、大体の位置を把握して、さらに近景の木のカタチを見ながら、だんだんと近づいていくのは愉しい。 もちろん細かく場所を示しているガイドもあるだろ…
鉄板を染める。心に語りかけてくるような跡をどのように残すか?
逸脱行動とは、何を逸脱するのか? 一つは社会で決められたルールを逸脱する、というケース。このルールは「道徳」と呼ばれることがある。 もう一つは、人としてやってはいけないことをやってしまうケース。このルールは「倫理」と呼ばれることがある。 一般…
今日の陽向の逸脱行動の理由を聞いたときに、彼はこう答えた。 「やめられるけど、やめられない」 「わからないからやっている」と周りのほとんどの大人たちは見ているが、やはりそうではなかった。 理由は、ぼくら大人と一緒だ。・・・わかっているけれど、…